エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.929
2020.11.05 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
AMD「Ryzen 9 5900X」市場想定売価税抜64,980円(2020年11月6日発売) 製品情報(AMD) AMD「Ryzen 7 5800X」市場想定売価税抜53,480円(2020年11月6日発売) 製品情報(AMD) |
今回の主役である「Ryzen 5000」シリーズは、AMDの最新コアアーキテクチャ「Zen 3」を採用するAMDの最新メインストリーム向けCPUだ。製造プロセスは「Zen 2」アーキテクチャと同じ7nmだが、CPUコアの最小単位である「CCX」(Core Complex)は「4コア/L3キャッシュ16MB」から「8コア/L3キャッシュ32MB」に拡張。またCPUダイ「CCD」(CPU Complex Die)の構成も2基の「CCX」から、1基の「CCX」に変更されるなど、内部設計には大きく手が加えられた。
「Zen 2」では、同一「CCD」内でも異なる「CCX」にあるキャッシュやCPUコアにアクセスする場合、Infinity Fabricを経由する必要があったが、「Zen 3」では直接アクセスができるようになった |
この改良により、「Zen 3」では同一「CCD」内にあるすべてのCPUコアが、32MBのL3キャッシュやその他のCPUコアに直接アクセス可能。「Zen 2」で発生していた、他の「CCX」にあるL3キャッシュやCPUコアへアクセスする場合の、Infinity Fabric経由の通信が解消され、レイテンシが大幅に軽減された。またロードストアやフロントエンド、分岐予測などの最適化もあり、IPCは実に19%も引き上げられている。
内部設計の最適化をはじめとした改良によって、製造プロセスを変えることなく19%ものIPC向上を実現した |
さらにブーストクロックも最高4.70GHzから最高4.90GHzへと200MHz上昇。シングルスレッド性能や動作クロックの影響が大きい、ゲームやオフィス関連のアプリケーションでは飛躍的にパフォーマンスが向上した。一方、TDPは従来と同じ最高105Wに据え置かれ、ワットパフォーマンスは初代Ryzen 7 1800との比較で2.4倍、高クロックながらTDPも125Wと高いIntel Core i9-10900Kとの比較では最大2.8倍に達するという。
TDPは「Zen 2」世代から据え置かれているが、実際の消費電力については、後半のテストセッションで明らかにしていく |
ちなみに「CCD」と「cIOD」をInfinity Fabricで接続する、スケーラビリティを重視したチップレット構成はこれまでと変わらず。また最大16コア/32スレッドのコア数や、DDR4-3200をサポートするメモリコントローラ、L2最大8MB、L3最大64MBのキャッシュ容量、PCI-Express4.0バスへの対応などは「Zen 2」アーキテクチャを踏襲している。
「CCD」の構成は変更されているが、スケーラビリティを重視したチップレット構成はこれまでと同じ。また「cIOD」にも大きな変更はないようだ |
第1弾として発売が開始されるのは、「CCD」x2構成が「Ryzen 9 5950X」「Ryzen 9 5900X」、「CCD」x1構成が「Ryzen 7 5800X」「Ryzen 5 5600X」の計4モデル。TDPはRyzen 5 5600Xが65W、それ以外は105Wで、いずれも倍率ロックフリーのためオーバークロックに対応する。なお今回発売されたCPUの中で、CPUクーラーが付属するのはTDP65WのRyzen 5 5600Xのみ。TDP105Wの3モデルについては、冷却性能の高い大型空冷クーラーや水冷クーラーを別途用意する必要がある。