エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1140
2022.05.15 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:pepe
マザーボードやグラフィックスカードで確固たる地位を築いていたMSIがゲーミングデバイス分野に進出したのは、約9年前に遡る2013年のこと。第1弾製品として投入されたのは、CHERRY MXスイッチを搭載するメカニカルキーボードの「GK-601」と「CK Series」。かつて詳細レビューをお届けした頃のことは記憶の彼方だが、不慣れなカテゴリであることをあまり感じさせない素性の良さを窺わせる製品であったことは、うっすらと覚えている。尖った要素の少ない、やや“ありきたり”な出来栄えではあったものの、ソツなくまとめられた完成度の高さはお見事だった。
MSI初のゲーミングデバイスとして、約9年前にデビューした「GK-601」。キースイッチは定番のCHERRY MXで、「Lightning」シリーズをイメージしたデザインが印象的だった |
もっとも、デバイス分野における門外漢的な空気を漂わせていたのは、そうした黎明期に限ってのこと。その後もMSIはキーボード製品の開発を加速させ、続々と後続ラインナップを市場に投入。今年に入っては、その集大成とも言える独自スイッチ搭載のハイエンドモデル「VIGOR GK71 SONIC」を送り出すに至った。
削ぎ落とされたスリムボディは歴代シリーズからの連続性を思わせるもので、デザイン面におけるアイデンティティもすでに確立した感がある。ゲーミング向けの機能やパフォーマンスについても、専業メーカーの製品に引けを取る要素はない。PCパーツメーカーの雄としてだけでなく、“デバイスメーカー”としての立場も確かなものにしたMSIの面目躍如と言える。
2022年に発売された最新モデル「VIGOR GK71 SONIC」には、待望と言えるオリジナルスイッチが採用された |
ちなみにこうしたゲーミングデバイス開発について台湾本社のプロダクトマネージャーに話を聞いたところ、そのコンセプトは「(ターゲットとする)ゲーマーにとって真にメリットがある製品でなければならない」というもの。その気持ちやニーズに寄り添うためにも、デバイス開発チームの構成メンバーには、自らがディープなゲーマーであることも求められるという。
そうしたユーザー目線の開発姿勢から生まれたアイデアは多く、2019年発売の「VIGOR GK60」からフルサイズキーボード向けに導入された“ゲーミングベース”もその一つ。これはスペースキー直下に備えるグリップ兼スタンドで、入力時の安定性を高めるとともに、スペースキーのスタビライザー機構を最適化してキータッチと耐久性を改善する効果があった。
「VIGOR GK60」で最初に導入されたのが、地味ながら“縁の下”を支える重要な装備の“ゲーミングベース”。その詳細は後ほどご紹介しよう | 「VIGOR GK50 LOW PROFILE」では、スイッチだけでなくキーキャップもローハイト仕様を採用した |
そのほか、ロープロファイルスイッチを採用する薄型モデル「VIGOR GK50 LOW PROFILE」には、通常と異なる新設計の低背キーキャップを組み合わせるなど、完成度を高めるための追加コストは惜しまない姿勢も特徴。ゲーミングキーボードとしては一見シンプルな印象を与える製品が多い中で、その“中身”は細部までよく考えて作られている。
さて今回のレビューでは、そのMSIキーボードから(名前が挙がった製品を含む)イチオシを5モデルピックアップ。次項よりモデル別に詳しく紹介していこう。